
半導体を用いたデジタルコンピューターによる計算や機械学習の処理を,振り子の運動や光の屈折などといった「物理現象」で代替する試みがなされています。これまでに,機械物理研究室(砂田・新山グループ)では,遅延フィードバックのある力学システムに最適制御を加えることで,物理現象をニューラルネットワークとして利用する手法を開発してきました。これに加えて,さらに Directed Feedback Alignment (DFA) 法を取り入れた新たな学習手法を開発しました。
ニューラルネットワークでは,誤差逆伝播法と呼ばれる手法によって学習を行いますが,DFA 法はこの誤差逆伝播法なしで学習を実現する手法のひとつです。これによって,逆伝播に必要な計算コスト(学習時間)や,物理現象を利用するために必要な情報量を削減することができます。さらに,ノイズに対する耐性も有していることが確かめられました。
また,この手法によって現実の物理現象で学習ができることを,レーザー光のシステムにおける実験で実証しました。
この研究結果はフィジカル・レビュー・レター (Physical Review Letters) 誌に掲載されました。(https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevLett.134.017301)